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不動産投資は、株式投資などと比べて資産の保有期間が長期にわたる点が大きな特徴です。
そのため、購入時点の印象だけで判断するのではなく、保有期間全体を見据えた数字の読み方が求められます。
たとえば、表面利回りが高い物件であっても、返済比率が高すぎれば毎月の手残りは少なくなります。
また空室が長期化しやすいエリアの場合、想定していた家賃収入自体が得られない可能性もあるでしょう。
さらに、購入後には修繕費という避けられないコストが発生します。
築年数の経過とともに増加する修繕費を事前に把握していなければ、突発的な出費でCFが悪化する場面も想定されます。
これらの指標は相互に影響し合っており、それぞれが独立しているわけではありません。
そのためひとつの指標だけを見て投資判断を行うことは、リスクの見落としにつながりやすいといえるでしょう。
適切な投資判断を行ううえでは、利回り・返済比率・空室率・CF・修繕費という5つの視点を組み合わせることが不可欠です。

表面利回りとは、年間の家賃収入を物件価格で割って算出する指標です。
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100
たとえば、物件価格が1億円で年間家賃収入が800万円の場合、表面利回りは8%となります。
この計算方法はシンプルで分かりやすい反面、管理費や固定資産税、修繕費といった経費が一切含まれていないため、購入を判断する際のデータとしては不十分です。
そのため、表面利回りはあくまで物件を比較する際の目安として捉えることが大切です。
数字の高さだけを見て購入を決めてしまうと、実際の収益性を見誤る可能性があります。
実質利回りとは、年間家賃収入から経費を差し引いたうえで算出する指標です。
実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間経費)÷物件価格×100
経費には、管理費や固定資産税、火災保険料、修繕費などが含まれます。
経費率は物件によって異なりますが、家賃収入の15〜20%程度を目安とするケースが一般的です。
先ほどと同じ物件価格1億円・年間家賃収入800万円の例で考えてみましょう。
経費率を20%と仮定すると、年間経費は160万円となり、年間純収益は640万円です。
この場合の実質利回りは6.4%となり、表面利回り8%との間には1.6ポイントの差が生じることが分かります。
このように、同じ物件でも表面利回りと実質利回りの数字は大きく異なるため、物件選定の際は表面利回りだけでなく実質利回りまで確認する習慣を持つようにしましょう。

返済比率とは、年間のローン返済額が年間家賃収入に対してどの程度の割合を占めるかを示す指標です。
「返済負担率」とも呼ばれ、金融機関がアパートローンの審査において重視する基準のひとつとなっています。
返済比率(%)=年間返済額÷年間家賃収入×100
たとえば、年間家賃収入が600万円の物件で年間返済額が330万円の場合、返済比率は55%です。
この数値が低いほど返済に余裕があると判断され、逆に高いほど収益に対する返済負担が重いと評価されます。
なお、住宅ローンの返済比率は借入者本人の給与所得を基準に算出しますが、アパートローンでは物件から得られる家賃収入を基準に算出するという違いがあります。
これは、アパートローンの返済原資が個人の給与所得ではなく、物件の家賃収入であることを前提としているためです。
アパートローンにおける返済比率の安全ラインは、一般的に50〜60%程度とされています。
この水準であれば、空室の発生や家賃下落といったリスクが生じた場合でも、ある程度の余裕を持って返済を継続できると考えられるためです。
この返済比率が60%を超えてくると、金融機関の審査が厳しくなる傾向にあります。
空室や家賃下落が発生した際にキャッシュフローが悪化しやすくなり、希望する融資額を得られないケースも珍しくありません。
また変動金利でアパートローンを組む場合は、金利上昇による返済比率の上昇リスクも見落とせないポイントです。
現時点でのシミュレーションに加え、金利が1〜2%上昇した場合の返済シミュレーションも実施し、余裕を持った資金計画を立てられるようにしましょう。
参考:日本銀行「金融政策」

空室率とは、賃貸物件全体のうち、実際に空室となっている割合を示す指標です。
物件タイプ別の実測値としては、特定非営利活動法人IREM JAPANと公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が共同で実施する「全国賃貸住宅実態調査」が参照できる数少ないデータとなっています。
2024年9月から12月に実施された最新版の調査(第13回・2025年版)によると、区分所有の単身向け物件(ワンルーム・1K・1DK)の空室率は全国平均で1.70%です。
一方、ファミリー向け物件(1LDK以上)の空室率は1.16%となっており、単身向けよりも低い水準にとどまっていることが分かります。
また、同調査では一棟物件についても構造別の空室率が公表されており、一棟・木造の空室率は2.09%、一棟・非木造は1.34%という結果でした。
なおこの調査は東京都、特に23区のサンプルが大多数を占めているため、地方物件にそのまま当てはまるわけではない点に注意が必要です。
あくまで都市圏における傾向として参照するのが適切でしょう。
参考:特定非営利活動法人IREM JAPAN・公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「(2025年度・第13回)全国賃貸住宅実態調査報告書」
空室率の差は一見小さな数字に見えますが、実際の家賃収入に与える影響は決して無視できません。
たとえば月額家賃8万円・10戸の物件で空室率が1.70%の場合、年間の空室損失額は約16万円にのぼります。
空室率はエリアや物件タイプによって異なるため、購入前に対象エリアの水準を確認しておくことが重要です。
空室率が低いエリアを選ぶことは、想定した家賃収入を安定的に確保するための第一歩といえるでしょう。
また空室率だけでなく、入居者の平均居住期間も併せて確認することで、より実態に近い収益予測が可能になります。
物件タイプ別の居住期間データについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

キャッシュフロー(CF)とは、家賃収入から経費とローン返済額を差し引いた後の手元に残る資金のことです。
CF=年間家賃収入-年間経費-年間ローン返済額
利回りが高い物件であっても、経費や返済額が大きければCFは少なくなります。
反対に、利回りがそれほど高くなくても、返済比率を抑えられていればCFに余裕が生まれるケースもあるでしょう。
表面利回りだけを見て投資判断を行うと、実際の手残りを見誤る可能性があります。
物件を検討する際は、利回りと合わせてCFの水準まで確認することが大切です。
CFは保有期間を通じて変化するものであり、購入時点で固定される数字ではありません。
特に金利と修繕費は、CFを大きく左右する要因です。
たとえば、表面利回りが十分にある物件であっても、金利上昇局面ではCFがマイナスに転じる可能性があるため、購入時点で複数の金利シナリオを想定しておくことが望ましいといえます。
また修繕費は毎年一定額が発生するわけではなく、特定の築年帯に集中して発生する傾向があります。(詳細は後述)
大規模修繕が重なる時期には、その年だけCFが一時的に圧縮される、あるいはマイナスになる場合も想定されるでしょう。
利回り・金利・修繕費という3つの変数を組み合わせて長期的にシミュレーションすることで、より現実的な収支計画を立てられます。
30年間のCFシミュレーションについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

前述した通り、修繕費は毎年一定額が発生するわけではなく、特定の築年帯に集中して発生する傾向があります。
国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」によると、木造10戸(1LDK〜2DK)の修繕費は以下のように推移します。
| 築年帯 | 棟あたり修繕費 | 年平均修繕費 | 主な工事内容 |
| 1〜4年目 | 0円 | 0円 | ― |
| 5〜10年目 | 約90万円 | 約18万円 | ベランダ・廊下塗装、排水管洗浄等 |
| 11〜15年目 | 約640万円 | 約128万円 | 屋根・外壁塗装、給湯器交換等 |
| 16〜20年目 | 約230万円 | 約46万円 | 給排水管交換、外構修繕等 |
| 21〜25年目 | 約980万円 | 約196万円 | 屋根葺替、浴室設備交換等 |
| 26〜30年目 | 約230万円 | 約46万円 | 給排水管交換、外構修繕等 |
| 30年合計 | 約2,160万円 | 約72万円 | ― |
このデータから、築11〜15年目と築21〜25年目に修繕費が集中しやすいという傾向が確認できるでしょう。
30年間の合計では約2,160万円、年平均では約72万円という水準です。
参考:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
高額な修繕費の支払いに備えるには、あらかじめ資金を積み立てておくという方法が有効です。
先述の修繕費計約2,160万円を単純に30年で割ると、年平均で約72万円、月平均では約6万円という計算になります。
この金額を毎月の収支計画に組み込んでおくことで、大規模修繕が集中する時期にも資金不足を防ぎやすくなります。
特に新築から取得した場合は積立期間を長く確保できるため、平準化の効果がより高まるでしょう。
なお、修繕費の発生時期や金額は個別の条件によって異なります。
あくまで目安として捉えたうえで、実際の物件については個別のシミュレーションを行うことをおすすめします。

ここまで、利回り・返済比率・空室率・キャッシュフロー(CF)・修繕費という5つの指標について、それぞれの計算方法や見るべきポイントを解説してきました。
これらの指標は単独で見るのではなく、組み合わせながら総合的に判断することが不動産投資の失敗を防ぐ鍵となります。
たとえば、表面利回りが高い物件であっても、返済比率が高すぎればCFの余裕は生まれにくくなります。
また空室率が高いエリアの場合、想定していた家賃収入を得られず、利回りの数字が絵に描いた餅で終わってしまう可能性もあるでしょう。
修繕費についても同様で、購入時点ではCFに余裕があるように見えても、修繕費が集中する時期を見落としていると想定外の資金不足に陥るリスクがあります。
これら5つの指標を確認する際のポイントは、以下の通りです。
これら5つの視点をあわせて確認することで、感覚に頼らない、根拠のある投資判断が可能になります。
一概に「何%あれば安心」とは言い切れません。
利回りはエリアや物件タイプによって適正水準が異なるため、単独の数字だけで判断するのではなく、返済比率やCFとあわせて確認することが重要です。
特に金利が上昇した場合でもCFがプラスを維持できるかどうかを、複数のシナリオでシミュレーションしておくとよいでしょう。
必ずしもそうとは限りません。
金融機関によって評価基準は異なり、ノンバンク系の金融機関では返済比率が60〜70%程度でも融資が可能な場合があります。
ただし、返済比率が高いほど空室や金利上昇時のリスクが大きくなるため、可能な限り50〜60%以内に収まる形で計画することをおすすめします。
エリアの人口動態や交通利便性、周辺の競合物件数などを確認することが有効です。
総務省「住民基本台帳人口移動報告」や国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」といった公的データを活用することで、エリアの需要の強さを客観的に把握できます。
物件を取得した時点から積み立てを始めることが望ましいでしょう。
国土交通省のデータでは、築11〜15年目や築21〜25年目に修繕費が集中する傾向が確認されています。
新築から取得した場合は積立期間を長く確保できるため、早い段階から月々の収支計画に組み込んでおくことで、資金不足のリスクを抑えやすくなります。
不動産投資は長期にわたる資産保有を前提とするからこそ、感覚ではなく数字に基づいた判断が求められます。
今回ご紹介した5つの指標を押さえておくことで、物件選びや資金計画をより確度の高いものにできるでしょう。
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新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。
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