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土地と建物では、価格を動かす要因も、時間の経過にともなう評価の変化も異なるため、物件価格の総額だけを見ていても適切な判断にはつながりません。
まずは新築アパートの価格を構成する2つの要素と、それぞれの特徴を比較しながら確認していきましょう。
土地と建物の性格の違いを整理すると、以下のようになります。
| 土地 | 建物 | |
| 価格を動かす要因 | 地価水準、面積、形状、接道条件 | 構造、延床面積、仕様、工事費の市況 |
| 経年による評価 | 築年数では減らない | 経年とともに下がる |
| 減価償却 | 対象外 | 対象となる |
| 調整の余地 | 仕入れ段階でほぼ確定 | 設計・仕様の選択で調整可能 |
土地の価格は購入前にしか動かせない一方、建物の価格は設計段階で調整できるという点が大きな違いです。
また建物は減価償却によって毎年費用計上できますが、土地にはその扱いがありません。
同じ1億円でも、土地と建物の内訳によって毎年経費にできる金額が変わってくるということです。
そのため物件の提案を受けた際は、総額に加えて土地価格と建物価格の内訳を必ず確認するようにしましょう。
新築アパートが「割高」と言われやすい理由として、表面利回りの低さが挙げられます。
表面利回りとは、年間の満室想定家賃収入を物件価格で割って求める、最も単純な収益性の指標のことです。
新築の場合は建築費や造成費、諸費用等が価格に反映されることで計算式の分母が大きくなるため、結果として同じ家賃水準で見たときに中古より低い数値が出やすくなります。
ただし表面利回りは、価格と家賃という前提条件から導き出された結果にすぎず、数値の低さだけで物件の有利・不利を正確に判断することはできません。
分母である価格の中身を分解して初めて、その水準の妥当性を検証できるようになるでしょう。
新築アパート投資について語られる誤解や、失敗が起こりやすいケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

新築アパートの収益性を左右する要素のうち、購入後に調整できないのが土地の仕入れ価格です。
建物は設計や仕様の選択で費用を動かせますが、土地は取得した時点で条件が固定されます。
建物価格を固定したまま、土地価格だけを変えた場合の違いを整理してみましょう。
前提は木造2階建て・8戸・2LDKのファミリー向けアパートとし、建物価格6,000万円、家賃は1戸あたり月8万円(年間満室想定768万円)としています。
| 土地3,000万円 | 土地4,000万円 | 土地5,000万円 | |
| 総額 | 9,000万円 | 1億円 | 1億1,000万円 |
| 年間家賃収入 | 768万円 | 768万円 | 768万円 |
| 表面利回り | 約8.53% | 約7.68% | 約6.98% |
土地価格が2,000万円動くだけで、表面利回りには1.5ポイント以上の差が生じることが分かります。
建物がまったく同じであっても、収益性の出発点は土地の仕入れ段階で決まってしまうというわけです。
土地はそれ自体の価格だけでなく、条件次第で建物側の工事費にも波及するという特徴があります。
たとえば地盤が軟弱な場合は地盤改良が必要になり、高低差がある場合は造成工事が加わるといった形です。
また敷地内に古家・廃屋等が残っていれば解体費用も発生します。
こうした費用は建物本体の工事費とは別に計上されることから、土地が安く見えても総額では割高になるというケースが起こり得ます。
そのため土地単体の価格だけで判断せず、その土地を使えるようにするまでにいくらかかるかを含めて比較する必要があるでしょう。
土地価格には地価の水準が反映されますが、地価が賃貸需要をそのまま表しているとは限りません。
地価には、住宅需要や商業地としての評価、開発期待など複数の要因が織り込まれているためです。
そのため地価が高いエリアであっても、狙う入居者層の需要が伴わなければ想定した家賃は成立しません。
たとえばファミリー向け物件を計画するなら、総人口ではなく子どものいる世帯がどう推移しているかまで確認しておくと良いでしょう。
家賃が下がりにくいエリアを見極める条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

建物の価格は、設計や仕様の選択によってある程度調整できる部分です。
一方で、工事費全体の水準は市況の影響を受けるため、個別の努力だけでは動かせない領域も存在します。
建物にかかる費用は「本体工事費」「別途工事費」「諸費用」の大きく3種類に分けられ、それぞれの特徴は以下の通りです。
| 主な内容 | 特徴 | |
| 本体工事費 | 基礎、躯体、屋根、外壁、内装、設備 | 建物価格の大半を占める |
| 別途工事費 | 地盤改良、造成、解体、外構、給排水引込 | 土地の条件で大きく変動する |
| 諸費用 | 設計料、確認申請費用、登記費用、火災保険料 | 工事費とは別に現金で必要になる場合が多い |
提案書で「建築費」として示される金額の中に、上記のどこまでが含まれているかは事業者によって異なります。
仮に本体工事費のみの表示だった場合、別途工事費と諸費用を加えたときに総額が想定を上回ることがあるため、あらかじめ内訳の範囲を確認しておく必要があるでしょう。
建物価格が高止まりしている背景には、建設現場の人件費上昇があります。
国土交通省は、作業員1人が1日(8時間)働いた場合の賃金目安となる「公共工事設計労務単価」を毎年公表しており、最新の改定では全国全職種の加重平均値が25,834円となりました。
これは平成25年度の改定以降14年連続の引き上げであり、25,000円を超えたのは初めてのことです。
引き上げ幅は全国全職種の単純平均で前年度比4.5%にのぼります。
この単価は公共工事の積算に用いるものであって民間の建築費そのものではありませんが、建設業全体の人件費水準を示す指標として参考にできます。
少なくとも建設現場の人件費については、個別の事業者の事情ではなく業界全体で上昇が続いていると読み取れるでしょう。
参考:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」
建物価格を左右するもうひとつの要素が、設備や内装の仕様・グレードです。
判断基準はその仕様の追加費用を家賃に上乗せできるかどうかという点に尽きるでしょう。
たとえば宅配ボックスや浴室乾燥機のように、入居者が価値を感じやすく、かつ募集条件に反映しやすい設備であれば費用をかける意味があります。
反対に、物件のターゲット層からは求められていない設備を追加しても、家賃が変わらないまま総額だけが増える結果になりかねません。
一方で、費用を抑えすぎると競合物件との比較で見劣りし、募集が長期化するおそれが生じます。
過剰と過少のどちらにも振れないよう、周辺の競合物件がどの水準の仕様を備えているかを確認したうえで判断するのが現実的といえるでしょう。
新築アパートの建築コストと利回りの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

ここからは、新築アパートを取得したときの価格が出口戦略にどう影響していくのかという点を整理してみましょう。
物件が「いくらで売れるか」という点は、買い手が「いくらまで借りられるか」によって決まります。
そして金融機関が融資期間を判断する材料のひとつが、法定耐用年数です。
法定耐用年数とは、建物の価値を税務上で何年かけて費用にするかを定めた期間のことで、たとえば住宅用の木造建物であれば22年と定められています。
この22年から築年数を引いた残りが、買い手の借入期間の目安になります。
| 売却時期 | 残る年数 | 買い手の融資期間の目安 |
| 新築時 | 22年 | 長く組みやすい |
| 築10年 | 12年 | やや短くなる |
| 築15年 | 7年 | かなり短くなる |
残存年数が短いほど買い手の融資期間も短くなりやすく、提示できる価格が下がりやすいという構図です。
ただし、耐用年数の経過とともに価値が下がるのは建物部分のみであり、土地の評価は築年数では減りません。
そのため土地の評価を確保できるエリアを選ぶ意味は、出口の局面で表れやすいといえるでしょう。
参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
価格の妥当性は、収支計画の前提条件とあわせて検証する必要があります。
特に注意したいのが、事業者が物件を一括で借り上げて毎月一定額を支払うサブリース契約です。
賃貸住宅管理業法では、契約前に事業者が重要事項を説明することが義務づけられており、その中には次の2点が含まれます。
いずれも当初提示された借り上げ家賃がそのまま続くとは限らないことを意味しており、提案時の家賃を前提として長期の返済計画を組むと、減額された際に収支が成り立たなくなるおそれが生じます。
そのため、事業者から提示される収支シミュレーションに、修繕費と空室損失が織り込まれているかも確認しておきましょう。
参考:国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」
土地の仕入れ価格が発生しない分、所有地に建てるほうが利回りは高く出やすくなりますが、判断軸そのものが変わるわけではありません。
その土地にファミリー向けの賃貸需要があるかを確認せずに建てれば、募集が長期化するリスクは同じように生じます。
将来の建築費がどう動くかはわかりません。
ただし公共工事設計労務単価は14年連続で引き上げられており、人件費の上昇が短期的な現象でないことは公表データから読み取れます。
そのため急激に下がる前提で計画を立てるのは避けたほうが無難といえるでしょう。
適正な社数を示した公的な基準はありません。
重要なのは社数よりも、同じ条件で比較できているかという点です。
本体工事費だけの見積もりと、別途工事費まで含んだ見積もりを並べても、金額の高い安いは判断できません。
あり得ます。
表面利回りは価格と家賃から計算された結果にすぎないため、数値の低さだけで結論は出せません。
土地の評価が売却時の価格を支えるケースや、修繕費の発生時期が遅いことで長期の手残りが確保できるケースもあります。
新築アパートの価格は、総額の大小だけでは評価できません。
土地・建築費・仕様のどこにいくらかかっているのかを分解して初めて、その水準が妥当かどうかを検証できるようになります。
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新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。
7億件の不動産ビッグデータから、投資勝率をAIがスコアで可視化。投資判断で欠かせない重要指標だけでなく、立地の将来人口予測、地価上昇、賃料動向も瞬時にグラフ化します。物件購入時の見えないリスクを教えてくれます。
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