「利回り8%」をそのまま信じていませんか?営業マンが言わない利回り・広告表示の落とし穴

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「利回り8%」をそのまま信じていませんか?営業マンが言わない利回り・広告表示の落とし穴
投資物件の広告で「利回り8%」「高利回り」といった表示を見ると、それだけ収益が見込めるように感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし広告に表示される利回りは、購入時の諸費用や運営コストを差し引く前の数字であることが一般的です。

そのため、広告の数字をそのまま手取りの目安と考えると、購入後に「思っていたより収入が残らない」と感じる原因になります。
重要なのは、その利回りがどのような前提条件で計算されているかを把握することです。
この記事では、不動産広告の利回り表示に関するルールを確認したうえで、表面利回りだけでは見えない落とし穴と一棟アパートの試算例、また購入前に確認したいポイント等を解説します。

物件を見る目を養う上で、とても重要なポイントばかりなので、必ず押さえておきましょう。

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広告の「利回り」は何を示している?まず知っておきたい表示のルール

一棟アパートの広告に載る利回りの多くは「表面利回り」

一棟アパートの広告に掲載されている利回りは、多くの場合が「表面利回り」です。
表面利回りとは、1年間の予定賃料収入を物件価格で割った割合を指します。
たとえば、物件価格が1億円で年間の予定賃料収入が800万円なら、表面利回りは8%となります。

計算がシンプルなため、物件を比較する入り口として使いやすい指標ですが、この数字には購入時の諸費用や、購入後の管理費・修繕費・税金などが含まれていません
そのため、表面利回りだけで物件の良し悪しを判断するのは早計といえるでしょう。

表示規約で定められている利回り表示の条件

不動産広告には、景品表示法に基づいて公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けた「不動産の表示に関する公正競争規約(以下、表示規約)」があります。
表示規約の施行規則では、利回りを表示する際に次の3点を明示するよう定められています。

  • 1年間の予定賃料収入を物件の取得対価で割った割合である旨
  • 予定賃料収入が確実に得られることを保証するものではない旨
  • 税金や物件の維持に必要な費用を差し引く前の数字である旨

つまり、広告の利回りはルール上も「費用控除前」「収入を保証しない」数字として扱われているということです。
広告を見る際は、利回りの近くにこうした注記があるか確認してみてください。

誇大な表示は宅建業法で禁止されている

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)第32条では、不動産会社が広告で代金や賃料などについて著しく事実と異なる表示をしたり、実際より著しく有利だと誤認させる表示をしたりすることを禁じています。
違反した場合、業務停止などの監督処分の対象となります。

一方で、ルールに沿った表示であっても、表面利回りだけでは実際の収益性を判断できない点は変わりません。
次章では、表面利回りから読み取れないポイントを整理します。

参考:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(2022年9月1日付規約及び規則変更)」/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法

表面利回りだけでは見えない3つの落とし穴

購入時の諸費用が物件価格に含まれていない

表面利回りの計算に用いられる「物件価格」には、購入時にかかる諸費用が含まれていません。
一棟アパートを購入する際は、物件価格とは別に次のような費用が発生します。

  • 不動産会社に支払う仲介手数料(売主から直接購入する場合は不要)
  • 所有権移転登記などにかかる登録免許税と、司法書士への報酬
  • 購入後に都道府県から課される不動産取得税
  • 融資を利用する場合の事務手数料や保証料
  • 売買契約書に貼る印紙代

仲介手数料の上限額は国土交通省の告示で定められており、税金の額も物件の評価額などによって異なります。
実際の投資額は「物件価格+諸費用」になるため、同じ賃料収入でも、投資額に対する収益の割合は広告の利回りより低くなる点を理解しておく必要があるでしょう。

管理費・修繕費・税金などの運営コストが差し引かれていない

先に述べたとおり、広告の利回りは税金や維持費を差し引く前の数字です。
一棟アパートを保有すると、次のような支出が毎年発生します。

  • 管理会社への管理委託費
  • 共用部の清掃費や電気代
  • 固定資産税・都市計画税(原則:市街化区域内の物件)
  • 火災保険料
  • 退去時の原状回復費や設備の故障・修繕費

特に修繕費は、築年数が進むにつれて外壁や屋根などの大規模な工事が生じやすくなるため、計画的に積み立てておく必要のあるコストといえます。
手元に残る収入は、賃料収入からこれらの費用を差し引いた金額になる点を押さえておきましょう。

「満室想定」の賃料が前提になっている

広告の利回りに用いられる「予定賃料収入」は、満室の状態を前提に計算されている場合があります。
しかし実際の賃貸経営では、入居者の退去から次の入居者が決まるまでの間に空室期間が生じます。
また現在の入居者が相場より高い賃料で入居している場合、退去後に同じ賃料で募集できるとは限りません。

予定賃料収入が「満室想定」なのか「現況の賃料」なのかによって、利回りの意味は大きく変わります
表面利回りを見る際は、どの賃料を前提にしているかを必ず確認するようにしましょう。
購入前に確認したい数字の見方については、以下の記事で詳しく解説しています。

参考:国土交通省「宅地建物取引業法関係

一棟アパートの試算で見る「利回り計算の罠」

表面利回りが同じでも実質利回りに差が出る試算例

表面利回りが同じ物件でも、空室や運営コストを反映することで手元に残る収益の割合は変わってきます。
費用を反映した利回りは「実質利回り」と呼ばれ、一般的には次の式で計算します。

実質利回り(%)=(年間の実際の賃料収入-年間の運営コスト)÷(物件価格+購入時の諸費用)×100

ここでは、物件価格1億円・満室時の年間賃料800万円(表面利回り8%)の物件AとBを、次の仮定で比較します。

項目物件A物件B
物件価格1億円1億円
購入時の諸費用(仮定)700万円700万円
満室時の年間賃料800万円800万円
空室を反映した年間賃料(仮定)760万円720万円
年間の運営コスト(仮定)120万円160万円
実質利回り約6.0%約5.2%

物件Aは(760万円-120万円)÷1億700万円で約6.0%、物件Bは(720万円-160万円)÷1億700万円で約5.2%です。
このように、同じ表面利回り8%でも、空室と運営コストの違いによって年間の手残りが大きく異なり、表面利回りだけでは物件の優劣を判断できないことが分かるでしょう。

周辺相場より高い賃料が前提になっていないか確認する

表面利回りは、賃料設定が高いほど高く算出されます。
そのため、広告の予定賃料が周辺の同じような物件の募集賃料と比べて高すぎないかを確認することが重要です。

新築時の賃料や、長く入居している方の賃料が、将来も同じ水準で続くとは限りません。
周辺で募集されている間取り・築年数・駅からの距離が近い物件の賃料と比べると、前提の妥当性を判断しやすくなるでしょう。

「家賃保証」「必ず儲かる」といった表現の受け止め方

「家賃保証」とは、不動産会社などが物件を一括で借り上げ、オーナーに一定の賃料を支払う「サブリース」と呼ばれる仕組みを指すことが一般的です。
国土交通省のガイドラインでは、サブリースをめぐって家賃の減額や契約解除に関するトラブルが起きている実態が示されています。

こうした背景から、賃貸住宅管理業法では、サブリースの広告で家賃や契約解除の条件などについて著しく事実と異なる表示をしたり、著しく有利だと誤認させる表示をしたりすることが禁止されています。
また表示規約でも、賃料収入の確実性などを表示する場合、合理的な根拠を示す資料がない限りは将来にわたって確実に安定した賃料収入が得られるかのような表示はできません。

そのため「保証」という言葉があっても、保証の期間や賃料の見直し条件まで確認することが大切です
サブリースを利用すべきケースと避けるべきケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン(令和5年3月31日改正)

数字の前提を確認するためのチェックポイント

レントロール・周辺相場・諸費用の内訳を確認する

広告の利回りを正しく読み解くには、数字の元になっている資料を確認することが欠かせません。
一棟アパートの購入を検討する際は、次の3点を確認しましょう。

  • レントロール:部屋ごとの賃料・入居状況・契約開始日などをまとめた一覧表で、満室想定か現況の賃料かを判断できる
  • 周辺相場:同じエリアで間取りや築年数が近い物件の募集賃料と比べ、予定賃料が高すぎないかを確かめる
  • 諸費用と運営コストの内訳:購入時の諸費用や、管理費・修繕費・税金の見込み額を書面で出してもらう

これらをもとに自分で実質利回りを計算すると、広告の数字との差が具体的に見えてくるでしょう。

前提条件に納得してから判断する

説明を受ける中で気になる点があれば、口頭による回答だけでなく、資料でも確認することが大切です。
契約前には、宅建業法第35条に基づき、宅地建物取引士による重要事項の説明が行われます。
またサブリースを利用する場合は重要事項説明書に加え、賃貸住宅管理業法に基づいてサブリース業者から契約条件の書面説明も行われます。
こうした機会に、賃料の前提や修繕の履歴、保証賃料の見直し条件などを改めて確認しておくと安心です。

投資用物件を買う時は、自分の家を買う時(消費者)と違って、投資家の目線が必要です。気になることを放置して損をしても、誰も責任を取ってくれません。自分自身でしっかり確認できるようになりましょう
一棟アパート投資でありがちな失敗例については、以下の記事も参考にしてください。

不動産の利回り・広告表示に関するよくある質問

Q. 表面利回りと実質利回りはどれくらい差が出ますか?

差の大きさは物件ごとに異なるため、一律の目安はありません
空室の状況や管理委託費、修繕費、税金、購入時の諸費用によって変化します。
検討中の物件については、レントロールや費用の見込み額をもとに個別に計算することが大切です。

Q. 広告の利回りが事実と違っていたら違法になりますか?

宅建業法第32条では、代金や賃料などについて著しく事実と異なる表示をしたり、著しく有利だと誤認させる表示をしたりすることを禁じています。
また景品表示法でも、取引条件を実際より著しく有利だと誤認させる表示は禁止されています。
実際に違反にあたるかどうかは、表示の内容や程度によって個別に判断されるため、広告や勧誘に疑問を感じた場合は、その不動産会社の免許を与えた国土交通省の地方整備局や都道府県の担当窓口、または消費者ホットライン「188」に相談してみると良いでしょう。

Q. 利回りが高い一棟アパートは避けるべきですか?

利回りが高いという理由だけで、避けるべきとはいえません。
ただし利回りが高い物件は、築年数が古い、駅から遠いなど、価格が抑えられている理由がある場合も少なくありません
今後の修繕費や空室のリスクを含めて、利回りの高さが妥当かどうかを確認することが大切です。

参考:消費者庁「景品表示法」/国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ

まとめ

  • 広告の利回りは表示規約上も「費用控除前」「収入を保証しない」数字として扱われている
  • 購入時の諸費用・運営コスト・空室を反映すると、手元に残る収益の割合は表面利回りより低くなる
  • レントロールや周辺相場、費用の内訳を資料で確認し、実質利回りを自分で計算することが大切

利回りの数字そのものより、その数字がどのような前提で計算されているかを確認することが、稼げる投資家になるための第一歩です
前提条件をひとつずつ確認していけば、広告の数字に振り回されず、自分に合った一棟アパートを冷静に見極められるでしょう。

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増澤 貞昌

増澤 貞昌

不動産投資家 宅地建物取引士 令和3年行政書士試験合格

新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。

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