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レバレッジとは、金融の世界で「てこの原理」を意味する言葉です。
不動産投資においては、自己資金に融資を組み合わせ、手元資金だけでは届かない規模の物件を取得することを指します。
その大きさは、物件価格が自己資金の何倍にあたるかという倍率で捉えると分かりやすいでしょう。
たとえば同じ自己資金2,000万円でも、借入額の設定によって倍率は次のように変わります。
| 自己資金 | 借入額 | 物件価格 | レバレッジ倍率 |
| 2,000万円 | 3,000万円 | 5,000万円 | 2.5倍 |
| 2,000万円 | 6,000万円 | 8,000万円 | 4.0倍 |
| 2,000万円 | 8,000万円 | 1億円 | 5.0倍 |
| 2,000万円 | 1億3,000万円 | 1億5,000万円 | 7.5倍 |
一棟アパートは土地と建物をまとめて所有できるため担保としての評価を得やすく、こうした倍率を設計しやすい投資対象といえるでしょう。
レバレッジの効果は、投じた自己資金に対してどれだけの手残りが生まれるかという視点で見ると実感しやすくなります。
ここでは自己資金2,000万円を前提に、レバレッジの異なる3つのケースでリターンを比べてみましょう。
いずれも表面利回り8%の物件を金利2%・返済期間25年・元利均等返済で取得したと仮定します。
| 物件価格 | 借入額 | 年間家賃収入 | 年間返済額 | 差引額 | 自己資金に対する割合 |
| 2,000万円 | 0円 | 160万円 | 0円 | 160万円 | 8.0% |
| 6,000万円 | 4,000万円 | 480万円 | 約203万円 | 約277万円 | 約13.9% |
| 1億円 | 8,000万円 | 800万円 | 約407万円 | 約393万円 | 約19.7% |
借入をせずに購入した場合、手残りは物件の利回りとほぼ同じ水準にとどまります。
一方、同じ自己資金でも借入を組み合わせて物件規模を大きくした場合、投じた資金に対する割合は段階的に高まっていくことが分かるでしょう。
これがレバレッジによって投資効率が上がる基本的な仕組みです。
ただし、レバレッジが常に有利に働くとは限りません。
物件から得られる収益水準を借入金利が上回った場合、借りるほど手残りが減っていくという現象が起こります。
これが逆レバレッジと呼ばれる状態です。
判断の目安となるのは、物件の利回りと借入金利の差です。
たとえば、実質的な利回りが5%の物件を金利2%で購入した場合、利回りと金利の差は3ポイントになります。
しかし、この金利が4%まで上昇すると利回りと金利の差は1ポイントに縮んでしまい、この状態では空室が数戸発生しただけで収支が赤字に転じかねません。
借入額が大きいほど、金利変動による返済額の増加幅も大きくなる点は意識しておきたいところです。
なおレバレッジを抑えれば安全性は高まりますが、その分だけ投資効率が下がり、資産拡大のスピードも緩やかになります。
借入を減らすことが常に正解というわけではなく、どこまで耐えられるかという上限を数値で把握し、その範囲内で効かせるという考え方が大切です。

レバレッジの上限は、感覚ではなく数値で判断する必要があります。
ここでは金融機関が審査で重視する3つの指標について、順に確認していきましょう。
LTV(融資比率)とは、物件の評価額に対して借入がどの程度を占めるかを示す数値です。
計算式は「融資額÷物件評価額×100」で、評価額1億円に対し融資8,000万円ならLTVは80%となります。
一棟アパートでは80〜85%程度が標準的な水準とされ、数値が低いほど自己資金比率が高くリスクの小さい融資と判断されやすくなります。
一方で90%を超えると担保余力が乏しくなり、売却してもローンを完済できない可能性が高まるでしょう。
なお建物の劣化や相場下落等で物件評価が下がった場合、返済の途中であってもLTVは上昇します。
そのため購入時の数値だけで安心せず、保有中も定期的に確認することが大切です。
返済比率とは、年間家賃収入に対して年間返済額がどの程度を占めるかを示す数値です。
計算式は「年間返済額÷年間家賃収入×100」で、一般的な安全ラインは50〜60%程度とされています。
60%を超えると手元に残る割合が40%未満となり、管理費や修繕積立金、固定資産税を差し引いた後の資金が細くなっていきます。
住宅ローンが借入者本人の年収を基準とするのに対し、アパートローンは物件の家賃収入を基準とする点が特徴です。
具体的な計算例や金利上昇時の試算については、以下の記事で詳しく解説しています。
DSCR(借入金償還余裕率)とは、家賃から管理費や固定資産税、修繕費等の経費を差し引いた後の純収益(NOI)で返済額をどの程度カバーできるかを示す数値です。
計算式は「NOI(純営業収益)÷年間元利返済額」になります。
このDSCRが1.0を下回る場合は、純営業収益だけでは元利返済を賄いきれない状態にあたります。
なお安全とされる具体的な数値については公的な統一基準が確認できないため、まずは1.0を下回らない水準の維持を目安にすると良いでしょう。
参考:一般社団法人不動産証券化協会(ARES)用語集「DSCR」
| 指標 | 何を測るか | 目安となる水準 |
| LTV | 物件評価額に対する借入の割合 | 80〜85%程度 |
| 返済比率 | 家賃収入に対する返済の負担 | 50〜60%程度 |
| DSCR | 純収益による返済のカバー度合い | 1.0を下回らない水準 |
たとえばLTVが基準内であっても、物件の収益性が低ければ返済比率は高くなります。
また返済比率が良好に見えても、経費率が高ければDSCRは低く算出されるでしょう。
3つの数値がいずれも目安の範囲に収まる借入額こそが、その物件における現実的な上限といえます。
各指標の関係性をより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、国内では段階的な利上げが続いています。
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で政策金利を1.0%へ引き上げ、7月31日の会合では同水準での据え置きを決定しました。
現在は約30年ぶりの高い金利水準にあり、変動金利で借り入れる場合は上昇リスクを前提に置く必要があるといえるでしょう。
参考:日本銀行「当面の金融政策運営について(2026年7月31日)」
金利が動くと、レバレッジの安全域そのものが変わります。
借入8,000万円・返済期間25年・元利均等返済を前提に、年間家賃収入800万円の物件で試算してみましょう。
| 金利 | 年間返済額 | 返済比率 |
| 2% | 約407万円 | 約51% |
| 3% | 約456万円 | 約57% |
| 4% | 約507万円 | 約63% |
金利2%の時点では返済比率51%と安全ラインに収まっていますが、金利が4%まで上がると返済比率は60%を超え、安全ラインから外れることが分かります。
このケースにおける年間返済額の差は約100万円で、月あたりでは8万円以上の負担増となります。
借入額が変わらなくても、金利上昇だけで安全ラインから外れ得るという点が重要です。
また金利変動だけでなく、物件の収益性によっても影響の出方は変わります。
次に、借入額と返済期間を同条件のまま、家賃収入の水準を変えて比べてみましょう。
| 年間家賃収入 | 金利2% | 金利3% | 金利4% |
| 700万円 | 約58% | 約65% | 約72% |
| 800万円 | 約51% | 約57% | 約63% |
| 900万円 | 約45% | 約51% | 約56% |
年間家賃収入700万円のケースでは、金利3%の段階ですでに60%を上回っています。
一方、900万円のケースでは金利4%でも安全ラインの範囲内に収まりました。
つまり収益性に余裕がある物件ほど、金利上昇に対する耐性が高くなるということです。
借入額を抑えるという発想だけでなく、家賃収入をどれだけ確保できる物件かという視点でも比較することが欠かせないといえるでしょう。
こうした変動を踏まえると、現時点の数値だけで借入額を決めるのは危険といえます。
判断の軸として置きたいのは、金利が1〜2%上昇しても返済比率が60%以内に収まるかという視点です。
先ほどの試算で、金利4%のときの返済比率が60%以内に収まるようにするには、借入額を7,500万円程度まで下げるか、より収益性の高い物件を選ぶ必要があります。
空室の発生も同時に想定し、稼働率を95%程度に見積もったうえで確認しておくと安心でしょう。
余裕を持たせる分だけ投資効率は下がりますが、長期保有を前提とする一棟アパート投資では、耐えられる範囲に収めることの方が優先といえます。

ここからは、自己資金と年収の組み合わせごとに狙える範囲を整理します。
いずれも金利2%・返済期間25年・元利均等返済を前提とした目安であり、実際の融資条件は物件評価や勤務先などによって変動する点にご留意ください。
自己資金1,000万〜1,500万円程度であれば、物件価格5,000万〜7,000万円台が現実的な範囲です。
なお諸費用として物件価格の5〜8%程度が別途必要になるため、頭金に充てられる金額はその分減ることになります。
| 物件価格 | 6,000万円 |
| 頭金 | 900万円(15%) |
| 諸費用 | 400万円 |
| 借入額 | 5,100万円 |
| LTV | 85% |
| レバレッジ倍率 | 約4.6倍 |
| 年間返済額 | 約259万円 |
このゾーンでは自己資金の余力が限られるため、運転資金として200万円程度を手元に残す設計が欠かせません。
返済比率を50%台に収めるには、年間家賃収入500万円前後、表面利回りで8%以上が目安となるでしょう。
自己資金2,000万〜3,000万円、年収900万〜1,200万円程度であれば、1億円前後の物件が視野に入ります。
一棟アパート投資として、戸数と収益のバランスを取りやすいゾーンです。
| 物件価格 | 1億円 |
| 頭金 | 1,500万円(15%) |
| 諸費用 | 600万円 |
| 借入額 | 8,500万円 |
| LTV | 85% |
| レバレッジ倍率 | 約4.8倍 |
| 年間返済額 | 約432万円 |
年間家賃収入800万円であれば返済比率は約54%となり、安全ラインに収まります。
また手元資金に余裕があれば頭金を2,000万円まで引き上げ、借入額を8,000万円に抑えるという選択も有効でしょう。
この場合の返済比率は約51%まで下がり、金利上昇への耐性が高まります。
自己資金3,000万円以上かつ年収1,500万円以上であれば、1億5,000万円規模の物件や複数棟の保有も検討できる水準です。
| 物件価格 | 1億5,000万円 |
| 頭金 | 2,250万円(15%) |
| 諸費用 | 900万円 |
| 借入額 | 1億2,750万円 |
| LTV | 85% |
| レバレッジ倍率 | 約4.8倍 |
| 年間返済額 | 約649万円 |
年間家賃収入が1,200万円であれば返済比率は約54%です。
ただし借入額が大きくなるほど、金利上昇時の増加額も膨らみます。
このゾーンでは個別物件の数値だけでなく、保有資産全体での返済比率を管理する視点が重要になるでしょう。
複数棟への拡大を検討する際の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.必ずしもそうとはいえません。
倍率を上げれば投じた自己資金に対する効率は高まりますが、その分だけ借入額が増え、空室や金利上昇の影響を受けやすくなります。
LTV・返済比率・DSCRの3つが目安の範囲に収まる水準を上限として考えるのが現実的でしょう。
A.自己資金を投じない借入は、LTVが100%に近づくため担保余力がほとんど残りません。
売却してもローンを完済できない状態が長く続くおそれがあり、追加融資の審査でも不利に働きやすくなります。
物件の収益性が非常に高い場合を除き、慎重に検討したい選択肢です。
A.返済比率が60%を超えている場合や、金利上昇で収支が圧迫されている場合には有効な選択肢となります。
ただし手元資金を使い切ってしまうと、突発的な修繕や空室への対応が難しくなるため、運転資金を確保したうえで、余剰分を充てるという順序を守りましょう。
A.法人化そのものが借入枠を直接広げるわけではありません。
審査では法人の決算内容や代表者個人の資産状況が総合的に確認されるため、設立直後は実績が乏しく評価されにくい場合もあります。
個人と法人のどちらが適しているかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
自己資金の額や年収、そして物件そのものの収益性によって、適したレバレッジの範囲は大きく変わります。
そのため数値として自身の上限を把握し、そのうえで判断することが長期的に安定した運営につながるでしょう。
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新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。
7億件の不動産ビッグデータから、投資勝率をAIがスコアで可視化。投資判断で欠かせない重要指標だけでなく、立地の将来人口予測、地価上昇、賃料動向も瞬時にグラフ化します。物件購入時の見えないリスクを教えてくれます。
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