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一棟アパートを所有すると、入居者対応から建物の維持管理、家賃の回収まで、さまざまな業務が発生します。
こうした業務を管理会社に任せる仕組みが「管理委託」であり、その対価として支払うのが管理委託費用です。
費用の全体像を把握するにあたって、まず「委託費とは何か」という基本を確認しておきましょう。
管理委託費とは、賃貸管理業務の全部または一部を管理会社へ依頼する際に支払う費用の総称です。
2021年6月に施行された賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)により、現在は管理業務の内容や管理会社の義務などが法的に整理されています。
また同法では、管理受託契約の締結前に重要事項を説明する義務や、家賃等の金銭を固有財産と分別して管理する義務なども定められており、契約前に費用・業務範囲の説明を受ける権利がオーナー側に保障されています。
そのため、複数の管理会社を比較検討する際の根拠としても活用することができるでしょう。
なお管理委託費は「管理会社に払う月々の手数料」とイメージされがちですが、実際にはいくつかの異なる費用で構成されています。
その違いを理解しないまま契約すると、想定外の追加費用が発生したり、必要な業務が委託範囲に含まれていなかったりするケースがあるため注意が必要です。
管理委託にかかる費用は、毎月発生するものと状況に応じて都度発生するものの大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。
毎月発生する費用の代表が「管理委託料(基本手数料)」です。
これは入居者からの問い合わせ対応や家賃の入金管理、共用部の清掃といった日常的な管理業務に対して支払う費用で、家賃収入に一定の割合を掛けた金額を請求されるのが一般的です。
一方、都度発生する費用には、入居者が決まったときに生じる仲介手数料・広告料や、契約更新の手続きに伴う更新手数料などがあります。
こちらは毎月かかるわけではありませんが、発生の都度まとまった金額が必要になるため、収支計画に織り込んでおくことが欠かせません。
次の章では、それぞれの相場を具体的に確認していきます。

管理委託料は月額家賃収入の5〜8%程度が一般的な相場とされていますが、実際の料率は委託する業務の範囲によって異なります。
たとえば集金管理などの限定的な業務のみの依頼であれば3%程度に抑えられるケースもあるでしょう。
逆に、入居者対応・建物巡回・清掃・滞納督促まで幅広く委託するケースでは、8%前後になることも珍しくありません。
なお、管理委託料に法定の上限額は設けられておらず、料率は各管理会社が自由に設定できる仕組みです。
具体的な金額のイメージとして、月額家賃収入が80万円の物件を例にすると、料率5%では月4万円(年間48万円)、料率8%では月6万4,000円(年間76万8,000円)の委託料がかかる計算です。
年間ベースで見ると、料率の差が収支に与える影響は決して小さくないことがわかるでしょう。
とはいえ、管理会社や契約内容によっては管理委託料に含まれる業務の範囲が大きく異なるため、料率だけで管理会社を選んでしまうのは早計です。
委託料に含まれることが多い業務としては、家賃・共益費の入金管理、入居者からの問い合わせ・クレーム対応、共用部の定期清掃、月次収支報告書の作成などが挙げられます。
一方で、以下の業務を委託する場合は別途費用が発生することが多くなります。
契約書の内容を細かく確認せずに「安い管理会社」を選んでしまうと、都度費用の合計が想定を大きく上回るといった事態につながりかねません。
そのため、何が含まれていて何が含まれていないかを明確にしたうえで委託料の料率を比較することが、適切な管理会社選びの基本といえるでしょう。
仲介手数料とは、管理会社による入居者募集を通じて賃貸借契約が成立した際に発生する費用です。
宅地建物取引業法第46条および国土交通省告示により、貸主・借主の双方から受け取ることのできる仲介手数料の合計額は、賃料の1ヶ月分(消費税別)が上限と定められています。
実務上はオーナー側の負担がゼロになるケースもありますが、空室が長引く局面ではオーナーが一部または全額を負担する条件で募集することもあるため、入居者が決まるたびに発生しうるコストとして収支に組み込んでおくことが重要です。
広告料(AD)とは、仲介会社に対して入居者紹介の動機づけとして支払うインセンティブ費用です。
仲介手数料と異なり、宅地建物取引業法上の上限規制がないため、オーナーが任意の金額を設定できます。
相場としては家賃の1〜2ヶ月分が一般的とされており、空室が長引いている物件や郊外に立地する物件ほど、高めに設定される傾向にあります。
インセンティブを設けることで仲介会社が優先的に物件を紹介してくれるため、成約までの期間を短縮しやすくなるというのがADのメリットです。
賃貸借契約の更新手続きを管理会社が代行する場合、更新手数料が発生することがあります。
金額の設定は管理会社によって異なり、公的機関による統一的な相場の公表はありません。
一般的には家賃の0.5〜1ヶ月分程度が目安とされていますが、これは民間の商慣行に基づくものであるため、契約前に必ず確認することをおすすめします。

管理委託費用を見直す際には「どこを削れるか」という発想になりやすいものですが、中にはコストを絞ることで逆に損失が拡大してしまう項目も存在します。
ここでは、削ることで経営に深刻な影響が出やすい3つの費用をチェックしていきましょう。
募集活動費とは、入居者を獲得するために管理会社・仲介会社へ支払う広告料(AD)や仲介手数料のことです。
「費用を抑えたい」という理由でADをゼロにしたり、仲介手数料の条件を絞ったりすると、仲介会社から優先的に紹介される機会が減り、空室期間が長引くリスクが高まります。
空室が1ヶ月続いた場合の機会損失は、そのまま家賃1ヶ月分の収入減に直結します。
たとえば月額家賃8万円の部屋が1戸空室になれば、1ヶ月で8万円、3ヶ月で24万円の収入が失われることになるため、1〜2ヶ月分のADを支払ってでも早期に入居者を確保したほうが、トータルの収支はプラスになるケースが多いといえるでしょう。
募集活動費は「削るコスト」ではなく、空室リスクをコントロールするための投資として位置づけることが重要です。
一棟アパートのオーナーには、法令によって定期的な設備点検が義務づけられており、中でも代表的なものが消防用設備等の点検です。
消防法第17条の3の3では、消防用設備等を設置した建物の関係者(所有者・管理者・占有者)に対して、定期的に点検を実施し、その結果を消防長または消防署長へ報告する義務が定められています。
この点検を怠ると、消防署からの是正指導を受けるだけでなく、万が一火災が発生した際にオーナーの管理責任を問われる可能性があります。
「費用がかかるから省く」という判断は、法令違反のリスクと隣り合わせであるという点を理解しておく必要があるでしょう。
契約前に法定点検の対応が委託範囲に含まれているかどうかを確認し、含まれていない場合は別途対応できる体制を整えておくことが欠かせません。
管理委託料を抑えたいがために対応品質の低い管理会社を選ぶと、入居者満足度の低下を招き、退去率の上昇につながるリスクがあります。
入居者からの問い合わせやトラブルへの対応が遅れることで不満が蓄積され、契約更新のタイミングで退去を選ばれる可能性が高まるためです。
退去が発生すると、その都度原状回復工事の費用・次の入居者募集のための広告費・仲介手数料が発生します。
こうした費用が積み重なっていけば、管理委託料をわずかに下げて得られるコスト削減効果をはるかに上回る損失が生じる可能性もあるでしょう。
管理委託料の安さだけを優先するのではなく、入居者対応の質・対応スピード・クレーム処理の実績なども含めて管理会社を選ぶことが、長期的な収益安定につながります。

管理委託費用を見直す際に大切なのは、「いかに安くするか」ではなく「支払う費用に見合った効果を得られているか」という視点です。
管理委託料が安くても、空室対応が遅い・入居者クレームへの対処が不十分といった状況が続けば、結果として収益を圧迫することになります。
一方、適切な費用を支払って質の高い管理を受けることで、空室期間の短縮や入居者の長期定着が実現すれば、トータルの収支はむしろ改善する可能性があるでしょう。
管理会社を選ぶ・見直す際には、以下の点を確認することをおすすめします。
複数の管理会社から見積もりを取り、料率だけでなく業務内容・対応実績・サポート体制を比較検討することが、費用対効果の高い管理体制を構築するための第一歩です。
また、現在すでに管理委託契約を結んでいる場合でも、定期的に委託内容と実際の対応状況を照らし合わせて見直すことが重要です。
管理会社との関係は長期にわたるため、契約時だけでなく運用段階でも継続的にコミュニケーションを取る姿勢が、安定した賃貸経営を支えることになるでしょう。
管理会社によって異なります。
家賃収入に対して一定割合を掛ける歩合制の場合、空室であれば該当する部屋の委託料は発生しないのが一般的です。
一方、満室時の家賃収入を基準に固定額で請求する契約形態では、空室の有無にかかわらず一定額が請求されるケースもあるため、契約前に空室時の委託料の扱いを必ず確認しておくことが重要です。
管理委託料はかからなくなりますが、業務に費やす時間・労力のコストが発生します。
また、入居者対応の遅れや法定点検の見落としといったリスクが高まる点も考慮が必要です。
物件が自宅の近くにある、時間的な余裕がある、賃貸経営の経験や知識がある、といった条件が揃っているケースであれば、自主管理を検討してみるのもひとつでしょう。
管理委託と自主管理のどちらが適切かは、物件の規模・立地・オーナー自身の状況によって異なります。
可能です。
ただし、管理委託契約では一般的に契約期間と解約予告期間が定められているため、解約通知のタイミングや違約金の有無を事前に確認する必要があります。
変更を検討する際は、現在の契約内容を確認したうえで、新しい管理会社との引き継ぎスケジュールを慎重に調整することが重要です。
入居者への影響を最小限に抑えるためにも、管理会社の変更は計画的に進めることをお勧めします。
管理委託費用の見直しは、賃貸経営のキャッシュフローを改善するうえで有効な手段のひとつです。
しかし、削ってはいけない項目を誤って省いてしまうと、空室や退去の増加といった形で損失が顕在化するリスクがあります。
費用の内訳と業務範囲を正しく把握したうえで、自身の物件に合った管理体制を構築することが、安定した賃貸経営への近道といえるでしょう。
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新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。
7億件の不動産ビッグデータから、投資勝率をAIがスコアで可視化。投資判断で欠かせない重要指標だけでなく、立地の将来人口予測、地価上昇、賃料動向も瞬時にグラフ化します。物件購入時の見えないリスクを教えてくれます。
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