【単身向けvsファミリー向け】空室率・退去率の差はどれくらい?実データで徹底比較

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【単身向けvsファミリー向け】空室率・退去率の差はどれくらい?実データで徹底比較
一棟アパート投資を検討するうえで、「単身向けとファミリー向けのどちらが空室リスクを抑えやすいか」という疑問を持つ方は少なくありません。
物件タイプの選択は長期にわたる収益水準を左右するポイントであり、印象や通説だけを根拠にすることには慎重さが求められるでしょう。

不動産業界では、「単身向けは利回りが高いが入れ替わりも多い」「ファミリー向けは安定しているが利回りが低め」といった見方が広く共有されています。
しかし、その差が実際のデータでどこまで裏付けられているかを把握している方は、意外と多くないのではないでしょうか。

この記事では、公的機関や不動産業界団体が公表する最新の調査データをもとに、単身向けとファミリー向けの空室率・居住期間・入替コストを具体的な数値で比較します。
単純に「どちらが有利か」という結論を示すだけでなく、数値の背景にある構造的な要因と、投資判断への活かし方もあわせて整理しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

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単身向け・ファミリー向けの空室率を実測値で比較

【区分】単身 vs ファミリーの空室率

賃貸住宅の空室率については、特定非営利活動法人IREM JAPANと公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が共同で実施する「全国賃貸住宅実態調査」が、物件タイプ別の実測値として参照できる数少ないデータです。

2024年9月〜12月に実施された最新版(第13回・2025年版)は、有効回答数40,979件に基づく調査であり、区分所有の単身向け物件(ワンルーム・1K・1DK)における空室率は全国平均で1.70%(前年2.08%)、ファミリー向け物件(1LDK以上)は1.16%(前年1.24%)という結果が示されました。

物件タイプ空室率(今年)空室率(前年)前年比
区分・単身向け(全国)1.70%2.08%▲0.38pt
区分・ファミリー向け(全国)1.16%1.24%▲0.08pt

両タイプとも前年比で改善しているものの、ファミリー向けが単身向けを0.54ポイント下回っており、2年連続でファミリー向けの方が低い水準を維持していることが分かります。

【一棟アパート】構造別の空室率

一棟アパートへの投資を検討している方にとって、より直接的に参考となるのが一棟物件の空室率データです。
同調査では、一棟物件についても構造別の空室率が公表されています。

物件タイプ空室率(今年)空室率(前年)前年比
一棟・木造(全国)2.09%2.01%+0.08pt
一棟・非木造(全国)1.34%2.67%▲1.33pt

一棟・非木造の物件は前年の2.67%から1.34%へと大幅に改善しています。
また一棟・木造は2.09%と、区分単身向けの1.70%に近い水準で推移しており、都市部を中心に堅調な稼働状況が続いていることが確認できるでしょう。
ただし、この調査データは東京都(特に23区)のサンプルが大多数を占めているため、地方物件への直接的な当てはめには注意が必要であり、あくまでも都市圏の傾向として参照することが適切です。

なお一棟物件の空室率を単身向け・ファミリー向けに分類した公的データは、現時点では確認できていません。
一棟投資においては、区分物件のデータと居住期間・退去率のデータをあわせて参照しながら、物件タイプの特性を判断することが現実的なアプローチといえるでしょう。

参照:特定非営利活動法人IREM JAPAN・公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「(2025年度・第13回)全国賃貸住宅実態調査報告書

空室率の差を実額に換算することで見えるもの

前章で確認したとおり、全国賃貸住宅実態調査(2025年度・第13回)では区分単身向けの空室率が1.70%、区分ファミリー向けが1.16%という結果になっています。
この差は一見小さく見えますが、物件の規模や保有期間によっては無視できない金額差として積み上がります。

以下は、次の前提条件に基づいて棟規模別に年間の空室損失額を試算したデータです。

  • 想定エリア:首都圏・都心近郊
  • 月額家賃:単身向け8万円、ファミリー向け13万円
  • 空室率:単身向け1.70%、ファミリー向け1.16%
戸数単身向け年間空室損失(1.70%)ファミリー向け年間空室損失(1.16%)差額
6戸約9.8万円約10.8万円約1.0万円
8戸約13.1万円約14.5万円約1.4万円
10戸約16.3万円約18.1万円約1.8万円

この試算では家賃水準の違いにより、戸数が多いほどファミリー向けの空室損失額が単身向けを上回る結果となっています。
ただしファミリー向けは家賃収入の絶対額も大きいため、空室損失が収入全体に占める割合(空室率)は単身向けより低いという点が本質的な差です。

同じ空室率1.70%と1.16%の差を、満室賃料収入に対する損失割合として捉え直すと以下のようになります。

単身向け(8万円×10戸)ファミリー向け(13万円×6戸)
年間満室賃料収入960万円936万円
年間空室損失額約16.3万円約10.8万円
損失が収入に占める割合約1.70%約1.16%
10年間の空室損失合計約163万円約108万円

戸数と家賃設定を調整して満室時の収入水準をほぼ揃えた条件で比較すると、10年間の空室損失はファミリー向けの方が約55万円少なくなるという結果になります。
表面利回りの数字だけでは見えにくいこうした損失の差を、投資判断の前に把握しておくことが重要です。

なお、このシミュレーションはあくまで一定の前提条件に基づく試算です。
実際の空室率はエリア・物件・時期等によって異なるため、参考値としてご活用ください。

退去サイクルの違いはどこから生まれるのか

2つの調査から見る居住期間の差

入居者の平均居住期間も、賃貸経営の安定性を左右する重要な指標のひとつです。
居住期間が長いほど入居者の入れ替わりが少なく、空室期間や原状回復・募集等にかかるコストを抑えやすくなります。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が公表する「日管協短観」(2023年度・第28回)では、単身世帯の平均居住期間は3年3ヵ月、ファミリー世帯は5年3ヵ月という結果が示されています。
第27回(2022年度)の調査でもほぼ同水準の差が確認されており、この傾向が継続的なものであることがわかるでしょう。

また全国賃貸住宅実態調査(2025年度・第13回)でも、退去率という別の指標から同様の傾向を確認できます。
同調査の関東地方データによると、区分単身向けの平均退去率は19.7%(居住期間に換算すると約5.1年)、区分ファミリー向けは16.1%(同約6.2年)となっています。

調査単身ファミリー
日管協短観 第28回(2023年度)平均居住期間3年3ヵ月5年3ヵ月約2年
全国賃貸住宅実態調査 (2025年度・第13回)平均居住期間換算(関東・区分)約5.1年約6.2年約1.1年

調査対象・定義・エリアが異なるため単純な比較はできないものの、いずれの調査においてもファミリー向けの方が居住期間が長いという傾向は一貫しているといえるでしょう。

参照:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第28回賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

居住期間に差が生まれる理由

居住期間の差が生まれる背景には、入居者層のライフスタイルの違いが深く関わっています。
単身向け物件の主な入居者は、学生・新社会人・転勤者など、ライフイベントの変化が起きやすい層です。

国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」によると、民間賃貸住宅に住み替えた世帯の世帯主年齢は「30歳未満」が34.6%で最多であり、居住人数については「1人」の世帯が41.1%を占めています。
このように、就職・転職・結婚・転勤といったライフイベントが重なりやすい20〜30代前半の単身者が入居者層の中心を担っていることから、数年単位で居住環境が変化しやすい構造にあるといえるでしょう。

一方、ファミリー世帯は子どもの通学先や生活環境の安定を優先する傾向があるため、一度入居すると住み替えの動機が生まれにくいという側面があります。
また家族での引越しは荷物の量が多く、引越し費用や新居の初期費用が単身者と比べて大きくなりやすいといった点も、住み替えを抑制する要因のひとつと考えられるでしょう。

参照:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書

単身向けとファミリー向け、賃料が下がりにくいのはどっち?

成約賃料のDI値から見る傾向

空室率や居住期間と並んで、投資家が長期の収益性を判断するうえで重要なのが賃料の安定性です。
賃料が下がりにくい物件ほど、長期保有における収益の見通しが立てやすくなります。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の日管協短観では、成約賃料の動向を「業況判断指数(DI値)」という指標で公表しています。
DI値とは、成約賃料が前年より「増加した」と回答した管理会社の割合から「減少した」と回答した割合を差し引いた数値で、プラスが大きいほど賃料上昇の勢いが強いことを示します。

以下は、間取り別の成約賃料DI値を第27回(2022年度)・第28回(2023年度)で比較したものです。

間取り第27回(2022年度)第28回(2023年度)
1R〜1DK(単身向け)3.813.9
1LDK〜2LDK(カップル・ファミリー向け)14.523.3
2LDK以上(ファミリー向け)15.722.8

2年連続で広い間取りほどDI値が高いという傾向が続いており、ファミリー向け物件の賃料上昇の勢いが単身向けを一貫して上回っていることが確認できます。
特に第28回では全ての間取りでDI値が大きく上昇しており、賃貸市場全体の賃料上昇傾向が強まっていることも読み取れるでしょう。

参照:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第27回・第28回賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

ファミリー向け物件の賃料を支える3つの要因

ファミリー向け物件の賃料が安定しやすい背景にはいくつかの構造的な要因があります。

供給量の少なさ

賃貸市場全体では単身向けのワンルーム・1K物件の供給が圧倒的に多く、2LDK以上のファミリー向け物件は相対的に少ない傾向にあります。
需要に対して供給が限られているエリアでは賃料の下落圧力がかかりにくいため、安定した賃料を維持しやすいといえるでしょう。

入居者の価格感度の違い

単身者は家賃の安さを重視して物件を選ぶ傾向が強い一方、ファミリー世帯は子どもの教育環境・生活利便性・住宅の広さといった条件を優先する傾向にあります。
そのため、条件の整ったファミリー向け物件であれば、多少家賃が高くても入居者が集まりやすいといえるでしょう。

分譲マンションの価格高騰

国土交通省が公表する「不動産価格指数」によると、マンション価格は長期にわたって上昇を続けており、一般的な世帯年収では購入が難しい水準に達しているエリアも少なくありません。
そのため、予算の都合で持ち家の購入を見送ったファミリー世帯が賃貸市場に滞留し、需要を下支えしている状況が生まれています。

参照:国土交通省「不動産価格指数

3つの指標で見る単身向けとファミリー向けの違い

空室率・居住期間・賃料安定性という3つの指標を通じて見えてきた傾向を、以下の表に整理します。

単身向けファミリー向け
空室率(区分・全国平均)1.70%1.16%
平均居住期間(日管協短観 第28回)3年3ヵ月5年3ヵ月
成約賃料DI値(日管協短観 第28回)13.9(1R~1DK)22.8(2LDK以上)
賃料の上昇傾向緩やか継続的に強い

ファミリー向け物件は空室リスクが低く、居住期間が長く、かつ賃料も上昇傾向が強いという結果から、長期保有を前提とした安定収益を重視する投資スタイルに適しているといえるでしょう。

一方で、単身向け物件は一戸あたりの専有面積が小さい分、同じ土地面積でより多くの戸数を確保しやすく、満室時の家賃収入を最大化しやすいという特徴があります。
また物件取得価格を抑えやすいため、自己資金が限られている段階での投資参入においては単身向けが有力な選択肢となるケースもあるでしょう。

重要なのは、表面利回りの数字だけで物件タイプを選ぶのではなく、空室率・居住期間・賃料安定性を長期視点で総合的に評価することです。
自身の投資目的や資金計画、保有期間の想定に照らしながら、最適な物件タイプを見極めるようにしましょう。

単身向け・ファミリー向けに関するよくある質問

Q1. 都市部では単身向けの空室率も低いと聞きますが、ファミリー向けとの差はありますか?

A. 都市部においても、ファミリー向けの方が空室率が低い傾向は変わりません。
全国賃貸住宅実態調査(2025年度・第13回)によると、関東地方に絞った場合の区分単身向けの空室率は1.70%、区分ファミリー向けは1.18%と、全国平均とほぼ同水準の差が確認されています。
都市部は単身向け物件の供給量が多い分、競合が激しくなりやすい側面もあるため、エリアごとの需給バランスをあわせて確認することが重要です。

Q2. ファミリー向けは退去時の原状回復費が高くなりませんか?

A. 専有面積が広い分、1回あたりの原状回復費用は単身向けより高くなる傾向があります。
ただし、ファミリー世帯は居住期間が長くなりやすいため、入れ替え回数自体が少ないという特徴があります。

そのため、1回あたりのコストが高くても、長期で見た総コストは単身向けと大きく変わらない、あるいは抑えられるケースも十分あり得るでしょう。
なお原状回復費用は物件の仕様や入居者の使用状況によっても異なるため、修繕積立の計画をあらかじめ立てておくことが大切です。

Q3. 空室率が低い物件を探すには何を確認すればよいですか?

A. エリアの人口動態・交通利便性・周辺の競合物件数の3点を起点に確認することをおすすめします。
転入超過が続くエリアや、ファミリー世帯の流入が見込まれる子育て環境の整ったエリアでは、空室が発生しても次の入居者が決まりやすい傾向にあります。
総務省「住民基本台帳人口移動報告」や国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」などの公的データを活用することで、エリアの需要の強さを客観的に把握することができるでしょう。

まとめ

  • 全国賃貸住宅実態調査(2025年度・第13回)によると、区分単身向けの空室率は1.70%、区分ファミリー向けは1.16%と、ファミリー向けが一貫して低い水準を維持している
  • 日管協短観(2023年度・第28回)では単身世帯の平均居住期間が3年3ヵ月、ファミリー世帯が5年3ヵ月と約2年の差があり、退去に伴うコストや空室損失を抑えやすい傾向にある
  • 成約賃料のDI値は2年連続で広い間取りほど高く、ファミリー向け物件の賃料上昇傾向が単身向けを上回っている

空室率・居住期間・賃料安定性のいずれの指標においても、ファミリー向け物件は長期保有に適した特性を持っています。
表面利回りだけでなく、こうしたデータを総合的に踏まえたうえで物件タイプを選ぶことが、安定した賃貸経営への第一歩となるでしょう。

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増澤 貞昌

増澤 貞昌

不動産投資家 宅地建物取引士 令和3年行政書士試験合格

新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。

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