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2026年6月の不動産業向け融資残高は123兆1,038億円となり、前回(2026年3月:121兆1,316億円)から+19,722億円増加して過去最高水準を再び更新しました。
2022年6月時点の残高が93兆2,038億円であったことと比べると、4年間で約30兆円積み上がった計算です。
国内銀行における不動産業向け融資残高は、この間一度も前四半期比でマイナスに転じることなく増加を続けており、不動産業向け融資が国内金融機関にとって引き続き重要な貸出分野であることが読み取れます。

| 年月 | 不動産業向け融資残高(億円) | 前年比 | 前年比増減(億円) | 前四半期比 | 前四半期比増減(億円) |
| 2022/06 | 932,038 | 4.46% | 39,814 | 0.81% | 7,517 |
| 2022/09 | 941,090 | 4.39% | 39,548 | 0.97% | 9,052 |
| 2022/12 | 957,085 | 4.90% | 44,726 | 1.70% | 15,995 |
| 2023/03 | 983,032 | 6.33% | 58,511 | 2.71% | 25,947 |
| 2023/06 | 994,834 | 6.74% | 62,796 | 1.20% | 11,802 |
| 2023/09 | 1,006,807 | 6.98% | 65,717 | 1.20% | 11,973 |
| 2023/12 | 1,020,646 | 6.64% | 63,561 | 1.37% | 13,839 |
| 2024/03 | 1,047,240 | 6.53% | 64,208 | 2.61% | 26,594 |
| 2024/06 | 1,058,933 | 6.44% | 64,099 | 1.12% | 11,693 |
| 2024/09 | 1,071,778 | 6.45% | 64,971 | 1.21% | 12,845 |
| 2024/12 | 1,094,008 | 7.19% | 73,362 | 2.07% | 22,230 |
| 2025/03 | 1,119,163 | 6.87% | 71,923 | 2.30% | 25,155 |
| 2025/06 | 1,138,435 | 7.51% | 79,502 | 1.72% | 19,272 |
| 2025/09 | 1,161,245 | 8.35% | 89,467 | 2.00% | 22,810 |
| 2025/12 | 1,182,918 | 8.13% | 88,910 | 1.87% | 21,673 |
| 2026/03 | 1,211,316 | 8.23% | 92,153 | 2.40% | 28,398 |
| 2026/06 | 1,231,038 | 8.13% | 92,603 | 1.63% | 19,722 |
直近の伸び方を前四半期比で確認すると、以下のような推移になっています。
| 2025/09 → 2025/12 | +1.87%(+21,673億円) |
| 2025/12 → 2026/03 | +2.40%(+28,398億円) |
| 2026/03 → 2026/06 | +1.63%(+19,722億円) |
2026年6月の前四半期比は+1.63%(+19,722億円)と、前回(2026年3月:+2.40%)から0.77ポイント低下しました。
2026年3月は年度末という季節的な要因もあり伸び率が高まっていたため、今回の低下はその反動として想定される範囲内の動きといえるでしょう。
同じ6月期の過去データと比較すると、2023年6月(+1.20%)・2024年6月(+1.12%)・2025年6月(+1.72%)に対して、今回は+1.63%となっています。
過去3年の6月期の平均(約+1.35%)を上回っており、絶対的な水準としては決して低くはないといえます。
金融機関の融資姿勢が「積極」から「選別」へと移行するなかでも、残高の拡大自体は着実に継続しており、勢いが落ち着いた局面においても市場の資金需要は底堅さを保っていることがデータから読み取れるでしょう。

前年同期比では+8.13%(+92,603億円)と、8%台の高水準を維持しています。
前回(2026年3月:+8.23%)からは0.10ポイントの低下にとどまっており、大きく崩れることなく安定した伸びが続いている状況です。
前年比増減額(億円)に注目すると、今回の92,603億円は集計期間における最大値を記録しています。
前年比の%はわずかに低下しているものの、絶対額としての増加規模は拡大しており、融資残高そのものの積み上がりが着実に進んでいることを示しています。

こうした融資動向の背景には、複数の要因が絡み合っています。
日本銀行による段階的な利上げが続いているものの、歴史的な観点では現在の金利水準は依然として低く、大型の不動産開発案件や収益物件の取得に必要な資金調達を行いやすい環境が続いています。
一方で、今後の金利動向については不透明な部分が多く、「いつ・どの程度上昇するか」が見通しにくい状況です。
こうした不透明感が、現在の水準のうちに融資を確定させておこうという判断を事業者の間で促しており、金利上昇への警戒感が逆に資金需要を前倒しで押し上げている側面があるといえるでしょう。
首都圏や大都市圏では、人口集中と企業活動の集積を背景にオフィス・住宅・商業施設への需要が根強く続いています。
安定した収益を見込める都市型物件は金融機関にとっても優先度の高い融資対象であり、再開発プロジェクトの進展が大型融資需要を継続的に生み出しています。
EC市場の拡大や企業のデジタル化の進展を背景に、物流施設とデータセンターは長期にわたり安定した収益が期待できる分野として引き続き資金が集まりやすい状況です。
外資系ファンドや機関投資家の関心も高く、これらの分野への融資が残高拡大を下支えする重要な柱となっています。
一方で、建材価格や人件費は高騰が続いており、開発プロジェクトの収益性は引き続き圧迫されています。
採算確保が難しい案件に対しては金融機関の審査が厳格化しており、地方の商業施設やテナント需要が不安定な賃貸系案件では融資が限定的になりつつある状況です。
残高の拡大と案件ごとの選別が同時進行しているという構造は、今四半期においても変わっていません。
今後の融資動向を占ううえで、以下のポイントが重要な判断材料となります。
不動産向け融資に最も直接的な影響を与えるのは、日本銀行の政策金利の動向です。
追加利上げが実施された場合、借入コストの上昇は開発計画の見直しや着工時期の延期につながりかねず、特に建築費を伴う開発型プロジェクトは金利の変動が採算に直結しやすいという特性があります。
逆に、現在の水準で金利が安定するようであれば、大型案件の資金調達が引き続き活発に行われ、融資残高の増加基調が維持される可能性があるでしょう。
政策決定会合の結果は市場参加者が注意深く見守るポイントであり、今後も動向の注視が欠かせません。
物流施設とデータセンターは、EC市場の拡大や企業のデジタル化を背景に、今後も融資残高を支える主要な柱として機能するとみられます。
加えて、再生可能エネルギーの発電所やPPA(電力購入契約)を活用したインフラ型不動産など、エネルギーと不動産を組み合わせた複合領域への融資需要も高まりを見せており、新たな資金需要の柱として注目度が増しています。
これらの成長分野に対して金融機関がどこまで積極的な融資姿勢を維持するかが、残高の水準を左右するひとつの焦点です。
人口減少が続く地方圏では、商業施設や賃貸住宅の収益性が中長期的に低下するリスクが高まっています。
金融機関は担保価値・入居率・周辺の需要予測をこれまで以上に厳密に検証するようになっており、事業計画の精度が融資の可否を左右する傾向が今後さらに強まると考えられます。
LTV(物件価値に占める融資残高の割合)やDSCR(物件収益が返済額をどれだけカバーできるかを示す指標)といった財務指標の基準が厳格化される可能性もあり、開発側には事業計画の高度化が求められる局面が続くでしょう。
外資系ファンドによる日本不動産への投資は継続しているものの、その動向は為替相場と密接に連動しています。
円安局面では日本の不動産が割安に映るため資金が流入しやすい一方、急激な為替変動や欧米の金利動向によって投資スタンスが短期間で変化するリスクも内包されており、引き続き注意が必要です。
不動産向け融資は景気後退局面で不良債権化しやすい特性を持つことから、金融庁は融資の総量管理や審査プロセスの適正化を重視する姿勢を続けています。
監督姿勢の強化が進めば、金融機関は融資先の財務内容や事業計画の確実性をより厳しく問うようになり、「量より質」へのシフトはさらに明確になる可能性があります。
融資残高が拡大を続ける一方で、その内部における融資品質管理の高度化がどう進むかも、今後の重要な見どころです。
金利水準の先行きが見通しにくいなか、今後の融資動向を左右する主要な変数は日銀の金融政策・為替動向・建築コストの推移です。
残高の拡大が続く一方で融資の内実が変化しつつあるこの局面を、四半期ごとのデータを通じて丁寧に追っていくことが重要といえるでしょう。
次回の統計でも、融資残高の動きが不動産市場全体にどのような影響を与えるか、引き続き注目していきましょう。
前回の考察記事は以下からチェックできます。
新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。
7億件の不動産ビッグデータから、投資勝率をAIがスコアで可視化。投資判断で欠かせない重要指標だけでなく、立地の将来人口予測、地価上昇、賃料動向も瞬時にグラフ化します。物件購入時の見えないリスクを教えてくれます。
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