2025年6月29日
“耐震等級3”の性能は?物件選びで後悔しないためのポイント
「地震大国」と言われる日本においては、“耐震性能が十分に備わっているかどうか”という点が住宅を購入・新築するうえでの重要な比較ポイントとなります。
この記事では、建物の安全性や将来の資産価値を左右する指標の1つ「耐震等級」の仕組みを解説していきます。
また“耐震等級3”の重要性や投資用物件としてのメリットなどもまとめているので、不動産投資を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
耐震等級とは?
耐震等級とは、住宅や建物がどれだけ地震に強いかを示す指標です。
等級には1から3までの3段階があり、数字が大きいほど耐震性能が高く、震災時の倒壊リスクを抑える設計になっています。
まずは、耐震等級の決まり方と各等級の違いについて詳しく見ていきましょう。
耐震等級の決まり方
耐震等級は建物の重さや構造全体のバランスをもとに決定される仕組みで、評価対象となる主な要素は以下の通りです。
- 耐力壁や筋交いの数・配置バランス
- 柱や梁の太さ、接合部の強度
- 建物の重心と剛心のバランス
- 基礎や床の強度・耐震設計
- 建物の形状(凹凸の少ない方が有利)
等級が高くなるほどこれらの要件が厳しくなり、設計にも制限が出やすいという特徴があります。
特に、間取りの自由度や大開口・吹き抜けの導入には慎重な設計判断が求められます。
各等級の違い
耐震等級は、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、住宅の性能表示制度の一部として導入されました。
これにより、住宅の耐震性能が「等級」という形で数値化され、比較・評価を行いやすくなりました。
品確法では、構造の安定に関する評価項目の1つとして耐震等級が設定されており、購入者や入居者が建物の耐震性能を客観的に判断できる仕組みとなっています。

なお建築基準法では「震度6強〜7程度の地震で倒壊しないこと」と定められているため、等級1であっても最低限の安全は確保されています。
ただし、繰り返しの地震や長期的な居住継続性まで考慮するなら、等級2以上の方が望ましいと言えるでしょう。
なぜ耐震等級3が重要なのか?
続いて、“耐震等級3”の重要性と耐震性能以外のメリットについて詳しく見ていきましょう。

1. 繰り返しの大地震に強い
2016年の熊本地震では、28時間以内に2度も震度7クラスの揺れが発生しました。
このような「繰り返し地震」では、建物に想定以上の負担がかかります。
実際、耐震等級1の住宅は最初の揺れにこそ耐えたものの、その後は住み続けられないほどのダメージを受けたというケースが数多く報告されました。
一方、耐震等級3の住宅は2度目の揺れの後も「倒壊・大破ゼロ」という実績を残し、居住継続が可能なレベルの耐久性を示しました。
このような高い耐震性能の実現に欠かせないのが、「耐力壁」や「筋交(すじかい)」といった耐震部材です。
耐震等級3の住宅にはこうした耐震部材が大量に使われている他、柱や梁を太くしたり、建物全体の構造バランスを強化したりするなどの工夫が行われています。
たとえば一般的な木造住宅の場合、耐震等級1と耐震等級3では以下のような違いが出てきます。

2. 耐震性だけじゃない、経済的メリットも
耐震等級3の住宅は「地震に強い」という安心感に加え、経済的な恩恵が大きいのも特徴の1つです。
具体的なメリットとしては以下のような点が挙げられます。
地震保険料が割引になる
地震保険は耐震性能に応じて保険料が割引される仕組みとなっており、耐震等級3を取得している住宅であれば、最も高い50%の割引率が認められることもあります。
また保険期間が長くなるほど割引による差が大きくなるため、長期的に見ると保険料の節約につながると言えるでしょう。
住宅ローンの優遇を受けられることも
一部の金融機関では、耐震等級3や長期優良住宅といった性能評価を取得している住宅に対し、住宅ローンの金利優遇を設けているケースがあります。
これにより、住宅ローンの総返済額が数十万円単位で変わることもあります。
資産価値が下がりにくい
耐震等級3の住宅は「高性能住宅」としての評価が明確であるため、将来的な売却時にも有利です。
特に中古住宅市場では、構造面での安心感が購入の決め手になることが多く、他の住宅よりも高値で売れる傾向にあります。
このように、耐震等級3は安心・安全だけでなく、資産形成や経済的な安定にも直結する指標です。
初期コストはかかるものの、長期的なリターンで見れば十分に元が取れる選択肢だと言えるでしょう。
木造住宅で等級3は取得できる?
「木造住宅で耐震等級3を取得するのは難しいのでは?」と思われがちですが、技術的には十分可能です。
ただし構造や設計の自由度、費用面での調整が必要になるため、“誰でも簡単に”とはいきません。
取得にあたって立ちはだかる主なハードルは以下の3点です。
設計面の制約
耐震等級3を取得するには、建物の耐震性を確保するうえで構造設計に厳格な条件が求められます。
そのため、デザイン性と耐震性の両立には高い専門性が求められ、設計段階からの密な打ち合わせが必要です。
- 耐力壁や筋交いの数・配置バランスを踏まえた設計が必要
- 柱や梁を太くすることで空間設計の自由度が制限される
- 大きな吹き抜けや開口部には構造補強が必須
- 建物形状の複雑さ(L字型・コの字型・平屋など)による難易度の上昇 など
コストの増加
耐震等級3を取得する際には、約80〜180万円程度の追加コストが発生するのが一般的です。
- 構造計算や評価申請費用:+20〜40万円程度。第三者機関(住宅性能評価機関)による審査が必須です。
- 施工コスト:+50〜100万円程度。梁や柱を太くする、耐力壁や補強金物を追加するなどの対応により、材料費・人件費がアップします。
- 使用材料の見直し:耐震ボードや構造用合板など、高性能な建材への変更が必要な場合もあり、坪単価に影響します。
初期費用としては高く感じるかもしれませんが、地震保険の割引・資産価値の維持・ローン金利優遇などで中長期的には回収可能な投資と言えるでしょう。
工期への影響
耐震等級3を取得するには、構造計算や設計内容の審査をクリアしなければならず、通常の建築に比べて工期が1〜2か月程度延びる可能性があります。
- 設計段階:構造設計士との打ち合わせが増え、間取りや仕様変更が発生するケースも珍しくありません。
- 審査工程:住宅性能評価を取得するためには、複数の審査ステップ(設計・中間検査・完成時検査)が必要です。
- スケジュール調整:設計変更が生じると、施工計画や資材手配にも影響し、全体スケジュールに波及します。
そのため、「耐震等級3を取りたい」と考える場合は、着工前の早い段階から計画に組み込むことが必須です。
あとから等級3仕様に切り替えるのは現実的ではありません。
投資用物件でも耐震等級3が有利

耐震等級3は、マイホームとしての安心感だけでなく、賃貸経営や不動産投資の視点から見ても非常に有利なスペックです。
特に地震リスクの高い日本において、建物の「耐震性」は入居者・金融機関・投資家にとっての重要な評価基準となっています。
ここからは、投資物件としての“耐震等級3”の魅力・メリットについて詳しく見ていきましょう。
1. 入居者が安心して長く住める
耐震等級3の建物は、震度7クラスの地震に対しても高い安全性を誇ります。
そのため「安全な家に住みたい」というニーズに強く応えることができ、以下のような効果を期待できます。
- 災害後の退去リスクの低減(住み続けられる可能性が高い)
- 入居者からの信頼獲得による長期入居・空室リスクの抑制
- 物件価値の差別化によって家賃を下げなくても競争力を維持しやすい
2. 地震で倒壊=家賃収入ゼロのリスクを避けられる
賃貸物件において建物が被災・損壊すると、修繕完了までの間は家賃収入を得られないという状況になりかねません。
耐震等級3を取得しておけば、そのリスクを最小限に抑えることができ、投資としての安定性が向上します。
また地震保険に加入していても、建物の「損害認定」が下りない限り保険金を受け取ることができません。
耐震等級3の住宅であればそもそもの損壊リスクが低いため、保険に頼らない投資戦略を組めるというメリットもあります。
3. 銀行評価が高く、融資が受けやすい
金融機関では、物件の耐震性を重視して物件評価(担保価値)を判断するため、耐震等級3を取得している住宅は以下のような恩恵を受けられる可能性が高まります。
- 建物評価が高くなる
- 長期ローンの審査に通りやすくなる
- 金利優遇や融資枠の拡大が期待できる
特にアパートローンや不動産投資ローンでは、耐震等級が明確なメリットとして作用することも多いため、融資戦略上の強みになると言えるでしょう。
4. 将来的な売却時にも有利
耐震等級3の認定がある物件は、中古市場でも「高性能住宅」として再評価されやすく、資産価値が落ちにくいのが特徴です。
- 購入検討者からの安心材料になる
- 高額査定やスピード売却につながる可能性がある
- リフォーム時も「耐震補強不要」の可能性が高い
つまり、出口戦略(売却)を考えた際にも、耐震等級3は優位に働くというわけです。
まとめ|耐震等級3は「手間」でも「価値」は絶大
設計・費用・工期の面では手間がかかるものの、木造住宅でも耐震等級3は取得可能です。
耐震等級3の住宅は地震への安心感や資産価値、保険・金融面での優遇など多くのメリットがあります。家族の安全を守る住まいづくりや、投資としての資産価値を重視するなら、耐震等級3の取得は十分に検討する価値がある選択肢です。
不動産投資の物件選びでお悩みの場合は、“耐震等級3”を1つの指標にしてみると良いでしょう。
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