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2025年12月の不動産業向け融資残高は1兆1,829億円(118兆2,918億円)で、前回(2025年9月:116兆1,245億円)から+21,673億円増加し、過去最高水準を再び更新しました。
2022年以降の推移を振り返ると、融資残高は一貫して右肩上がりの増加基調を維持しています。
2022年6月時点で約93兆2,038億円だった残高は、わずか3年半で約25兆円増加しており、不動産業向け融資が日本の金融市場において引き続き重要な位置を占めていることが数字からも明確に読み取れます。
特に2023年から2024年にかけては増加ペースが加速しており、不動産開発・投資分野への資金需要の旺盛さが反映された結果といえるでしょう。
一方、2025年に入ってからは、その勢いに変化の兆しが出始めています。
残高そのものは増加を続けていますが、伸び率という観点では緩やかな鈍化傾向にあり、量的拡大から質的精査へと金融機関のスタンスが変化しつつある時期に差し掛かっています。

| 年月 | 不動産業向け融資残高(億円) | 前年比 | 前年比増減(億円) | 前四半期比 | 前四半期比増減(億円) |
| 2022/06 | 932,038 | 4.46% | 39,814 | 0.81% | 7,517 |
| 2022/09 | 941,090 | 4.39% | 39,548 | 0.97% | 9,052 |
| 2022/12 | 957,085 | 4.90% | 44,726 | 1.70% | 15,995 |
| 2023/03 | 983,032 | 6.33% | 58,511 | 2.71% | 25,947 |
| 2023/06 | 994,834 | 6.74% | 62,796 | 1.20% | 11,802 |
| 2023/09 | 1,006,807 | 6.98% | 65,717 | 1.20% | 11,973 |
| 2023/12 | 1,020,646 | 6.64% | 63,561 | 1.37% | 13,839 |
| 2024/03 | 1,047,240 | 6.53% | 64,208 | 2.61% | 26,594 |
| 2024/06 | 1,058,933 | 6.44% | 64,099 | 1.12% | 11,693 |
| 2024/09 | 1,071,778 | 6.45% | 64,971 | 1.21% | 12,845 |
| 2024/12 | 1,094,008 | 7.19% | 73,362 | 2.07% | 22,230 |
| 2025/03 | 1,119,163 | 6.87% | 71,923 | 2.30% | 25,155 |
| 2025/06 | 1,138,435 | 7.51% | 79,502 | 1.72% | 19,272 |
| 2025/09 | 1,161,245 | 8.35% | 89,467 | 2.00% | 22,810 |
| 2025/12 | 1,182,918 | 8.13% | 88,910 | 1.87% | 21,673 |
直近の伸び方を前四半期比で確認すると、以下のような推移になっています。
| 2025/03 → 2025/06 | +1.72%(+19,272億円) |
| 2025/06 → 2025/09 | +2.00%(+22,810億円) |
| 2025/09 → 2025/12 | +1.87%(+21,673億円) |
2025年9月から12月にかけては小幅な低下にとどまっており、一見すると急激な失速には至っていません。
しかし、過去に記録した局面(2023年3月:+2.71%、2024年3月:+2.61%)と比較すると、+2%台の力強い増勢は影を潜め、+1%台後半での推移が定着しつつある状況です。
この変化の背景には、金融機関が融資判断において収益性や担保価値をより厳しく精査するようになっていることが影響していると考えられます。
旺盛な需要が続いていた2023年〜2024年前半のような「申し込めば通る」局面から、案件の質が問われる「選別融資」の局面へと構造的に移行していることが、この数字に表れているといえるでしょう。
四半期ごとの伸び幅は依然としてプラスを維持しており、融資残高の拡大自体は継続しています。

前年同期比では+8.13%(+88,910億円)と、引き続き高水準の伸び率を維持しました。
2025年9月の+8.35%(+89,467億円)からは微低下したものの、8%台の前年比増加率を維持している点は、長期的な拡大基調が続いていることを示す重要なサインです。
また2025年6月以降、前年比の水準が7%台後半から8%台へと切り上がっており、前年の残高増加ペースを上回る形で推移していることがわかります。
これは、外資系ファンドによる日本不動産への投資継続や、物流・データセンター向けの大型案件が融資残高を下支えしていることを示唆するものです。
一方で、2025年9月をピークに前年比がわずかに低下へと転じた点は、注視すべき変化として捉えておく必要があるでしょう。

こうした融資動向の背景には、複数の要因が絡み合っています。
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的な利上げを行っています。
それでもなお、歴史的な視点で見れば現在の金利水準は依然として低く、大規模な不動産開発・投資案件の資金調達が行いやすい環境にあることは変わりません。
一方で、今後の金利動向については不透明な部分も多く、市場では「いつ・どの程度上昇するか」についての見方が分かれています。
こうした状況下で注目されるのが、金利がさらに上昇する前に資金を確保しておこうとする「借り急ぎ」の動きです。
特に大型の開発案件や長期保有を前提とした投資物件では、低金利のうちに融資を実行しておくことが収益計画上の重要な判断となるため、金利上昇への警戒感が逆に融資需要を前倒しで押し上げている側面があるといえるでしょう。
今後、利上げの方向性が明確になるにつれて、この前倒し需要がどのように変化するかが融資残高の動向を読むうえでの注目点となります。
首都圏や大都市圏では、人口集中と企業活動の集積を背景に、オフィス・住宅・商業施設への需要が根強く続いています。
安定収益を確保しやすい都市型物件への融資は、金融機関にとっても優先度が高い分野であり、この傾向が融資残高を押し上げる要因のひとつとなっています。
また、再開発プロジェクトの進展も、大型融資需要を継続的に生み出している点は見逃せません。
一方で、建材価格や人件費の高騰は続いており、不動産開発プロジェクトの収益性は圧迫されています。
採算ラインを確保しにくい案件に対しては、金融機関が融資判断を慎重化する傾向が強まっており、「積極融資」から「選別融資」へのシフトが鮮明になっています。
特に地方の商業施設や、テナント需要が不安定な賃貸案件では融資が限定的になりつつあるといえるでしょう。
外資系ファンドは引き続き日本の不動産市場に注目しており、とりわけ円安局面では日本の不動産が割安に映るため、投資資金が流入しやすい環境が続いています。
その一方で、為替相場の急変動や海外の金利上昇が生じた場合には、外資の投資スタンスが短期間で変化するリスクも内包されており、融資動向に与える影響として引き続き注意が必要です。
金融庁の監督姿勢を背景に、金融機関は不動産向け融資において収益性・安全性を重視した案件選定を強化しています。
残高そのものは拡大を続けているものの、融資の内実は「量の積み上げ」から「質の担保」へと重心が移っており、この構造的な変化が伸び率の鈍化として数字に表れているといえるでしょう。
今後の融資動向を占ううえで、以下のポイントが重要な判断材料となります。
日本銀行の政策金利の動向は、不動産向け融資に最も直接的な影響を与える要素です。
今後さらなる利上げが実施された場合、事業者にとって借入コストの上昇は開発計画の見直しや着工時期の延期につながりかねません。
特に建築費を伴う開発型プロジェクトは、金利が1%変化するだけで採算性が大きく左右されるため、政策決定会合の結果は市場参加者が注視するポイントのひとつとなっています。
逆に、現在の水準で金利が安定・低下に転じれば、大型案件の資金調達が再び活発化し、融資残高の増勢が回復する可能性もあるでしょう。
EC市場の拡大やデジタルトランスフォーメーションの進展を背景に、物流施設とデータセンターは長期的な収益性が見込める分野として金融機関の関心が高い状態が続いています。
加えて、再生可能エネルギーの発電所やPPA(電力購入契約)を活用したインフラ型不動産など、エネルギーと不動産の複合領域への融資需要も高まりを見せており、新たな資金需要の柱になりつつあるといえます。
これらの成長分野は、今後も融資残高を支える重要な柱として機能するとみられるでしょう。
人口減少が進む地方圏では、商業施設や賃貸住宅の収益性が中長期的に低下するリスクが高まっています。
金融機関は担保価値・入居率・周辺の需要予測などをより厳密に検証するようになっており、事業計画の精度が融資の可否を左右する傾向が今後さらに強まると考えられます。
LTV(融資比率)やDSCR(債務返済カバー率)といった財務指標の基準が厳格化される可能性もあり、開発側には事業計画の高度化が求められる局面に入っていくでしょう。
※LTVとは物件価値に占めるローン残高の割合、DSCRとは物件の収益が返済額をどの程度カバーできるかを示す指標です。
日本の不動産市場は外資系ファンドにとって引き続き注目度の高い投資先ですが、その動向は為替相場と密接に連動しています。
円安局面では日本の不動産が割安に見えて買いが入りやすくなる一方、急激な円高や欧米の金利急騰が起きた場合には、短期間で投資マネーが流出するリスクも抱えています。
外資による大型取得の背後で国内金融機関が融資を実行するケースも多いため、為替と海外金利の動向は融資残高に直接影響する要素として引き続き注視が必要です。
不動産向け融資は景気後退局面で不良債権化しやすい特性を持つことから、金融庁は融資の総量管理や審査プロセスの適正化を重視する姿勢を続けています。
監督強化が進む場合、金融機関は融資先の財務内容・事業計画の確実性をより厳しく問うようになり、「量より質」へのシフトは一段と進む可能性があります。
融資残高が拡大を続ける一方で、内部の融資品質管理がどのように高度化されるかも、今後の注目点として挙げられるでしょう。
今後は、日銀の金融政策・為替動向・建築コストの推移が融資動向を左右する主要な変数となるでしょう。
四半期ごとのデータを丁寧に追うことで、不動産市場への資金の流れや熱量の変化をいち早く把握することができます。
次回の統計でも、融資残高の動きが不動産市場全体にどのような影響を与えるか、引き続き注目していきましょう。
前回の考察記事は以下からチェックできます。
新卒で株式会社リクルートに入社したのち、20代のうちに起業する。
2014年株式会社鎌倉新書取締役に就任、同社はマザーズに上場(現在はプライム市場)。
リーマンショック後に個人で不動産投資を始める。地方築古、区分マンション、民泊運営、中古RC、新築RCなどの投資を経験。
自身のITスキルを活かして、情報収集ツールや物件の収益分析ツールを自作し、最小の労力で最良の意思決定をすることを強みにしている。
京都大学農学部卒業。
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